toggle
2023-04-08

ナゼ職場にも防災備蓄が必要なのか?帰宅までの距離と時間

貴方のお住まいはどこですか?職場まで何kmありますか?大きな自然災害を起きたら本当に歩いて帰るつもりですか?

根性論ではなく、危険性の問題です。家族が心配なことはもちろんよくわかります。私も子どもが小さかったらどんなことがあっても帰ろうとするはずです。

しかし!家族を心配して無理に帰って道中で危険な目に遭えば家族は逆に悲しむだけです。

●帰宅までの距離と時間

私の家から私が利用するA点、B点、C点の距離を調べました。

●A点 10km 電車15分、車30分、徒歩2時間

●B点 18km 電車45分、車40分、徒歩3時間40分

●C点 27km 電車60分、車60分、徒歩5時間30分

これはあくまでも平常時の計算です。大きな災害が発生したらこの何倍かかるでしょうか。

●もう帰っていいよ!は危険の元

2011年3月11日東日本大震災の日、私の息子も帰宅困難になりました。

 

地震後、「今日はもう帰っていいよ!」と職場が親切心で言ったつもりが、電車は止まり、地上は混雑。ホテルも空いていない。自転車も売り切れ。息子からの連絡後、それ以降は電話が繋がりませんでした。

職場の親切が、結局、息子はただただ都心の危険な街に放り出されただけでした。

 

そして待つこと深夜12時。ようやく連絡が取れました。聞けば、どうにもこうにもならないので駅のホームでずっと待機していたそうです。すると、ちょっとだけ自宅寄りに電車が動いたそうです。

「駅前のファミレスにいるから」と言ったら後はまた電話が切れ・・。何度かけ直しても繋がりません。一先ず居場所はわかったので車を飛ばして迎えに行きました。しかし、半ばからほぼ車は動きません。大渋滞です。車の横を歩く人がいます。よく見ると、パンプスを持ってスリッパで歩いている女性。革靴を踏んで歩いている男性。疲れ切っている男性。駅に近付くほど徒歩の人が増えてきます。

 

「まさか?!歩いて帰るのか??」と悟ったとき、私が真っ先に思ったのは「この人たち、どこまで歩いて帰るつもりなんだろう」でした。しかも、夜中に体力を消耗した女性の一人歩きです。危険すぎます。男性だってどんな事件事故に巻き込まれるかわかりません。

 

「家に帰りたい気持ちは誰だって同じ」ですが、家族を思うならなおさら、職場に留まる、一時滞在施設などで待機するという行動をとってください。

ちなみに、私の息子が辿り着いた駅は先のA点です。

●A点 自宅から10km

●平常時 電車15分、車30分、徒歩2時間

●東日本大震災の日 電車停止、車2時間、徒歩不明

建物の倒壊や電信柱が倒れていたら2時間では絶対に着かなかったはずです。

待ち合せのファミレスに辿り着くと息子は店の中にいました~。「いまさっき中に入れた。それまで外で並んでいた」とのことでした。あの日は寒い夜でした。

息子のことだからきっと大丈夫!と祈ることしかできなかったけど、家族としては「なんで帰らせたのよ!」と怒りを感じていました。車に乗せ、コンビニに寄っても棚は空っぽ。定員さんもアタフタしていてポットでお湯を沸かす余裕もありませんでした。

 

それでも家族としては、徒歩帰宅をせずに留まっていてくれたことが何よりも救いだったと思いました。冷静な判断ができた息子に帰宅困難時の行動を教えられました。

●参考資料(内閣府)

帰宅困難者対策の実態調査結果について~3月11日の対応とその後の取組~

首都直下地震帰宅困難者等対策協議会事務局 内閣府(防災担当)

大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン

平成27年(2015年)3月内閣府(防災担当)

●担当者だけではありません

働く女性が増えましたが、コロナ過から自宅でのリモート業務も増えた時代です。家庭の防災備蓄は災害後も暮らし続けるためにもちろん必要ですが、同時に帰宅困難を防ぐためにも職場の防災備蓄は欠かせません。

 

私の息子の経験や内閣府の資料からも「担当ではないから」「総務がやることでしょ」「会社がやっているんじゃないの?」とは言っていられないことはおわかりいただけたと思います。職場の一員として共に意識も知識も高め、積極的に災害の備えをすすめていってください。

それが結局、自分自身を守ることに繋がります。

●防災備蓄をすすめる術がわかります

かと言って、防災担当者でも苦労されている職場の備蓄。

 

モノや数もそうですが、保管場所やその手順もわからずにお困りです。「それは会社の責任だろ!」と言うのは簡単ですが、何もない状態で待機しろと言われてももっと困るのは従業員の皆さんです。だから、担当者の仕事だから!と人ごとでは言っていられません。また、協力するにも担当者がお悩み中ならすすめません。

 

これらの問題を解決すべく、具体的な方法がわかるように作られたのが当協会の【職場備蓄管理者】講座なのです。担当者が知識を得るだけではなく、社内で共有していく方法もわかりますので、職場備蓄管理者がいると協力する術もわかります。

 

職場備蓄は「自分ごと」として捉え、ぜひ社内に職場備蓄の重要性を広めてください。防災担当者がお困りでしたら【職場備蓄管理者】の講座を教えてあげてください。そして、無理な徒歩帰宅だけはどうぞ控えてください。

都内に放り出されていた息子が無事帰宅できたことは本当に安堵でした。待つ家族だってあんな心配はしたくりません。出来ることならそのまま留まって欲しいと思います。

 

小さなお子さまがいたらお迎えを心配ですよね。園も保護者が迎えに来ることを強調します。だから、どんなことがあっても歩いて帰ろうと思ってしまいます。「けど、もし無事に帰ることができなかったら・・。」そうならないために大きな災害時は帰らないことを行政は指示しています。

預かる立場の保育士も学校教諭も「親」の方がいます。職場から離れられず、わが子を迎えに行けないという事態も起きるでしょう。

 

そもそも「保護者が必ず迎えに行く」は正しいのか?「いつまでに迎えに行く」と言い切れるだろうか?そこに私は疑問を感じます。先ずは、家族のためにもご自身の安全確保を考え、お子さんはだれが、どこが預かってくれるかを今から真剣に話し合っておくことが大切です。

 

そして、安心して職場で待機できる体制を整えておくことをおすすめいたします。

代表 長柴美恵

関連記事